壮絶!感動!開発物語

突然の激痛!おしりにストロー!入院仲間と院長の協力で生まれたキセキのクッション!

壮絶!感動!「楽じ朗君」開発物語

「楽じ朗君」と、その誕生までの壮絶エピソードは、

真木悠子著
「痔と遭遇した人々~あなたにもできる痔獄からの脱出~
(主婦の友社・刊¥980円)」
(監修:東葛辻仲病院   院長 辻仲 康伸)

で紹介されています。
以下の文章は、同書の90P~96Pを抜粋したものです。

 

痔瘻(じろう)が突然やってきて

痔瘻(じろう)は普通の手術よりたいへんそう。後の経過はどうかなー、こればかりはやってみなけりゃわからないしと考えていたおり、「全国のじろう君のためなら」と忙しい仕事の合間に、体験を書いて送ってくれた人がいる。
矢島教文さん(42歳)がその人。矢島さんは現在、柏市加賀で寝具とインテリアの店「アムール」を経営している。この人はとてもパワフルで、仕事が終わればジャズ仲間とピアノを弾き、休日には音楽会をプロデュースするという具合に前向き人生を実行している人だ。このたび、痔瘻で入院しても、「転んでもただでは起きなかった。」入院中にお仲間が冗談半分で提案した痔の座布団を実際に商品化してしまったのである。
この座布団「楽(らく)じ朗君」は現在、売上げも好調とのこと。お仲間一同チャレンジ精神を教わったのである。

 

じろう君の手記

さわやかに目覚めた木の芽どきの朝、いつものようにトイレでお務めをしようとしたそのとき、それは突然やって来た。痛くてお出ましあそばない。何だこりゃーである。今まで40年ちょっとの人生で、オシリの具合が悪い事を意識した覚えはない。今になって思い出してみれば、6、7年前に半年ほど下痢が止まらない時期があったくらいである。
痔という病気に対しての認識もほとんどなかったし、十年来、おしり洗浄便器を愛用している事で、この病気と小生はまったく無縁のものと決め込んでいた。身の回りで「痔」の話を聞くと、内心「トイレのときぐらいしっかり洗えよー」ぐらいに思っていたのである。
さて、この痛みだが、一向によくならないどころか、日を追って悪くなるような気がする。
知り合いの薬局を訪ねて一部始終を話すと、「かな」ということだ。座薬をもらった。カゼの熱冷ましに数年来座薬を愛用していて、いつもたいへん効果があり、相性もよかったので、これでOK!と思っていた。
ところがどっこい、これがまったく効かないのである。思い切って病院に行くことにした。

 

初体験の告白

外来受付をすませ、診察室に入ると、簡易ベッドのような診察台があり、そこへ横向きに寝て、膝を抱えた姿勢で診察を受ける。診察の後、ちょっとした問診があり、すぐに結論を出された。
こりゃひどいな。深部痔瘻だ。神に誓って言うけど、手術なしでは絶対治らないね。入院の予約とってから帰ってちょうだい
・・・ああ、なんという事だ。入院も手術も、小生にとっては、まさに「初体験」なのである。
診察後に出た飲み薬は、完璧に効いた。痛みはとれたが、思いのほか重い症状のようなので、ベッドのあきをみて、入院することになった。入院は10日ほどということである。小生は6人部屋を選んだ。どうせなら、同志といっしょのほうが心強いし、経済的でもある。
入院当日、一抹の不安を胸にしての入室。しかし、病院はどこも清潔で気持ちがよく、トイレもすべておしり洗浄便器なのも気に入った。しかも小生は窓際で眺めのよいベッドである。
入院の翌日が手術なので、入院当日は下剤を飲んで 腸の掃除をする事になっている。当然トイレに何回か足を運ぶのだが、夜中に足を運んだとき、仕上げの一歩手前で、不覚にも貧血を起こした。これももちろ「初体験」である。意識が薄れそうになり、思わずトイレのブザーを押した。看護婦さんが二人すぐに飛んで来て両脇から小生を抱きかかえ、ベッドに運んでくれた。

 

オシリからストロー!?

痔瘻の手術はたいへんだと聞いていたが、手術は思ったより短時間で、痛みもなく、30分くらいで終わった。腰椎痲酔なので先生の説明はよく聞きとれる。
「きわめて深い痔瘻であり、中にかなりの膿がたまっている。肛門の脇からストローを出して侵出液を外へ出す」らしい。小生のシリからストローなんて・・・これも初体験。女性週刊誌の初体験のやけに色っぽい響きにくらべて、小生の初体験のなんと哀れでみじめなことか。しかし痛みのほうはさほどでなく、痲酔が切れたときに多少痛んだが、それは鎮痛剤でおさまる程度だったから、睡眠は十分とれた。
翌日には夕方から立って歩けるようになる(イボ痔の人は朝から歩いていたが)。
オシリのストローもさほど気にならなかった。排便時にちょっとじゃまに感じるくらいである。しかし、皆はもう、手術の翌日の昼にはおいしそうな食事が出ているというのに、小生は4日間もいつも「おかゆ」であった。そんなときテレビをつけると、やたらおいしそうに食べている画面がよく出ていて、しゃくにさわったものである。それからなんといってもうらやましかったことは、イボ痔組の入浴。鼻歌まじりにさっぱりとした顔で風呂から帰ってくる姿を見るのはつらいものがあった。
なにせ、小生に風呂の許可がおりたのはなんと退院の日の朝だったのだから。

 

楽じ朗君の誕生

入院患者とはいえ、例の場所を除いてはまったく健康人であるゆえ、皆そのあり余るエネルギーを休憩室に集まって発散する。痔の話から、社会情勢、人生相談と、多彩に花が咲くのである。
ある日、病院の売店で購入したドーナツ型の円座を使っていた人が「これ、穴があいていていかにもでしょう?退院したら使いづらいよね」「会社じゃ絶対いや!」なんて話になった。
そのとたん、小生の頭にかわいい座布団が浮かんだのである!

ドーナツ型の周りを四角にしてカバーをつける。花柄か何かの、夢のある・・・。そしてギャザーもよせて華やかに・・・。布団屋の小生の脳裏にはもう可憐な座布団がイメージされてしまった。ああ、これは商売人の悲しい性か、はたまたヒラメキか・・・。

皆に話したら「それは絶対いい!」と反応が抜群なのだ。「よし、それじゃあいっちょう作ってみっか?」てな事になった。そして仲間がつけてくれた名前は「楽じ朗君」-「痔でも楽ちん。朗らかに過ごせる。」ってことだ。
さすがはお仲間、なんというすばらしいネーミングを考えてくれたものだ!天才だと感心する。
翌日、ずうずうしくも病院長に相談に行った。先生はなかなか心の広い人で「ま、作ってみれば」と許可してくださった。
退院後、試行錯誤を繰り返し、現在、製品として病院の売店で販売していただいている。おかげさまでたいへん好調な売れ行きである。もちろんオシリのほうも好調なのは言うまでもない。

 

辻仲ドクターの診療とアドバイス

典型的な座骨直腸窩痔瘻の症例(偏差痔100)括約筋保存的手術で完治している。
肛門周囲膿瘍一般的には何の前触れもなく起こる。膿瘍膣(のうようくう)の膨隆(ぼうりゅう)(膿のかたまりが大きくなる)で起こる。膿瘍が深く大きいほど、発熱疼痛は強い。切開排膿とともに劇的な症状の改善があるので、そのまま放置しておきやすい。
この人は素直に根本手術を受けたので今後とも何の心配もないでしょう。

教訓(1)痔瘻は手術しなければ治らない
痔瘻は根本手術を受けなければ完治しません。膿を出して痛みがおさまっても、そのまま放置すれば、痔瘻のトンネルが何本も枝分かれしてしまいます。
初期なら手術も簡単にすみます。こじらせないうちに手術を受けましょう。

 

矢島さん(私)の痔歴書

36~37歳:5~6年ずっと下痢気味がつづく。
42歳:突然の痛みがオシリにくる。市販の座薬効かず、病院へ。手術。
入院生活:学生時代に戻ったような生活。しかしオシリにはしっかりストローが。
退院後:あれはなんだったんだろーという出来事だったとふり返る。オシリは快調。

 

 

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